本を読みましょう。:LIFE

愛人 ラマン (河出文庫)

愛人 ラマン (河出文庫)

北の愛人 (河出文庫)

北の愛人 (河出文庫)

かくも長き不在 (ちくま文庫)

かくも長き不在 (ちくま文庫)

  • 上記二つは、デュラスが過ごしたサイゴンでの出来事、中国人青年との薄倖な愛と肉欲についてが中心になって描かれている。少女の幼い体と成人男性の肉欲の間に、サイゴンの空気のような濃い霧が生まれる。その霧は性愛の堕落と、湿度によってどんどん深く濃く堕ちて行くのだけれども、それが愛なのか、体の求める渇望なのかは幼さ故に分からない少女。「あなたを愛している」と深く心を求める男は、自分の行動の伴わなさにも気づかない。幾許かのお金により継続させていると思われた関係は、男がある種の追従をまっとうすることにより救いを得る。心の中では。セックスと愛の関係を、デュラスは粛々を書き進める。愛していることと、男を迎え入れることに何の関係があっただろうか。少女はフランス行きの船の中でそれを知る。セックスと愛について、疑問を持った人に是非読んで欲しい。
  • 「かくも長き不在」。これはこのブログの趣旨とは多少意図するところが違うと思われるが、これもデュラスならではの女の思いと愛の深さを知ることができる。ゲシュタポに捕らえられ、死んだはずの夫。その夫にそっくりな浮浪者に出会い、女の人生は大きく変わっていく。記憶を取り戻さぬまま幸せとは言えぬラストを辿るのだが。最後に女が「冬になったら又、戻ってくるわ」と言う。ああ、まったくデュラスは一言に愛を集約させることができる天才だ。「ラマン」のラストで男が言う、「今もあなたを愛しています。一生変わらずあなたを愛し続けるでしょう」という言葉にも人の一生を狂わせるほどのきつい気持がこもっている。性と愛。この二つを心は同時に追う事ができるのだろうか。デュラスの作品を読むときに、女のわたくしはいつもそう思う。