平たいまま渇望する憐

「ああ!」やっと合点がいった。
そうかそうか…私は身動きが取れないまま男の素手で叩かれているの。
また、しょうこりもなくこの状況がおかしくてたまらず思わずけらけらと声をたてて、
ああ実際には口に咬まされている布のせいで声は出ていないのだろうけども…ともかく私はおかしくなって笑っている。
男がくすくすといつまでも笑い続ける私に腹を立てたのか、私の体に鈍痛が走る。
この男はおかしいのだろうか?
酒の酩酊でけらけらと笑う女を許さないばかりか、折檻してくるなんて。
そんなことをされてもすぐには酔いは醒めない。そんなこともわからないのだろうか。
そうそう!確かあの時も私は酔っぱらってしまったの!
ねえ、聞いて。あの時の事だって私はちゃんと覚えている。
金沢へ旅行に行った時。
あれはおかしかったわね。私は紅葉を愛でると言い張って外出したのに、することと言えば地酒を探す事ばかり。
あなたはうんざりして顔が赤く照っている私を旅館まで連れて帰ったの。
…あの時だったかしら?月見酒をしたのは。
いや、そうではないはずね。私は酔いつぶれてしまってそのまま寝たのだもの。
浴衣の帯がはずれてしまったものだからね、あなたが私の手首に巻いたのよ。
そうだわ。ずっと聞こうと思っていたの。あれはどういう遊びなの。
子供の時のような人質ごっこなら私は何も楽しくはないのよ。
身動きのとれない私に何をしたって、酔いつぶれているんだもの。覚えていないし。
もしかして、あなたは昼間から酔いつぶれて滅茶苦茶になった旅行の仕返しをするために私をしばったの?
そうなの?
それなら納得がいくわね。だって、私が悪かったのだものね。
ぐちゃぐちゃと音がする。
…ああ、どうして私ってこうそそっかしいのかしら。私は口に布を咬まされているってさっき思い出したのに!
じゃあ、今まで話した旅行の思い出もあなたは理解してなかったの?
やだわ。
そうした後、彼は泣きながら私の尻をなで始める。
だんだん分かってきた。私は身動きのとれない中、素肌を晒されて男の素手でばしばしと叩かれた。そしてその個所は皮膚の感覚がなくなりむしろ痺れがむず痒さにかわり。
そして麻酔を打ったように肥大した感覚のまま。
下腹部が肥大したようにこれまでに味わった事のない感覚は、そういえばいつもの太ももの内側をそわそわと撫でられて体の芯を熱が貫いた時と似ている。
酔っぱらっているせいであるのだろう。これは何かに似ている。
泣きながら叩き、拘束され叩かれる私たちの様子はまるで性交に似ている。